特定技能1号の基本ルール
特定技能は、日本で外国人労働者を受け入れるための在留資格の一つです。
特に、特定技能1号は「相当程度の知識や経験を持つ外国人」を対象としており、14の産業分野で就労が認められています。
この在留資格の特徴として、「家族の帯同は原則として認められていない」点が挙げられます。
これは、特定技能1号が「一時的な労働力確保を目的とした在留資格」であることが理由です。
日本政府としては、労働力不足を補うために外国人を受け入れる一方で、長期的な定住を促すものではないとの考えから、家族の帯同を厳しく制限しています。
1号と2号の違い
特定技能には「1号」と「2号」の2つの種類があります。
1号は、特定の産業分野において一定の技能を持つ労働者向けの資格ですが、2号は「熟練した技能」を持つ労働者向けの資格です。
この2号については、家族の帯同が認められ、配偶者や子どもが「家族滞在」の在留資格で日本に滞在できるようになります。
つまり、家族と一緒に日本で暮らすためには、特定技能2号への移行が必要になるのです。
原則として家族帯同が認められない理由
特定技能1号で家族の帯同が認められない主な理由は、以下の3つです。
- 一時的な労働力確保が目的であるため
特定技能1号は、慢性的な人手不足を補うために導入された制度であり、長期的な移住を前提としていません。
そのため、日本政府としては家族の帯同を認めることで、定住の道が開かれることを避けようとしています。 - 技能実習制度との整合性を保つため
特定技能1号の多くの外国人は、技能実習を修了した後にこの在留資格へ移行します。
技能実習制度でも家族の帯同は認められていないため、特定技能1号でも同じルールが適用されています。 - 社会保障や教育の負担を抑えるため
家族の帯同を許可すると、配偶者の就労支援や子どもの教育支援など、日本の社会保障制度に負担がかかる可能性があります。
特定技能1号は、あくまで労働力確保が目的のため、こうした負担を最小限にするために、帯同が制限されているのです。
家族帯同が認められる例外ケースとは?
配偶者や子どもがすでに日本に在留している場合
特定技能1号では原則として家族の帯同は認められていませんが、例外的に在留が可能となるケースがあります。
その代表的な例が、特定技能に変更する前からすでに日本に在留している家族です。
例えば、以下のような場合は、配偶者や子どもが引き続き日本に滞在できる可能性があります。
- 技能実習生として日本に滞在していた間に、配偶者や子どもが「家族滞在」や「特定活動」などの在留資格で日本に住んでいた。
- 別の在留資格(留学や就労ビザ)を持つ配偶者と一緒に日本に住んでいた。
このような場合、家族は引き続き適切な在留資格を取得することで、日本に滞在できる可能性があります。
ただし、審査は個別のケースごとに異なるため、出入国在留管理庁へ相談することが重要です。
特定技能外国人同士の間に生まれた子どもの場合
特定技能外国人同士の間に日本で生まれた子どもは、例外的に在留が認められることがあります。
これは、日本で生まれた子どもが無国籍状態になることを防ぐための措置です。
具体的には、以下のようなケースが考えられます。
- 両親ともに特定技能1号の在留資格を持っており、日本で子どもが誕生した場合。
- 少なくとも一方の親が、特定技能1号で引き続き日本に滞在する場合。
このような場合、子どもは「特定活動」の在留資格を申請することで、日本に滞在できる可能性があります。
ただし、将来的に特定技能1号の在留資格が終了すると、家族全員が帰国しなければならない点には注意が必要です。
その他の特定活動ビザによる帯同の可能性
特定技能1号の外国人が家族を帯同させたい場合、例外的に「特定活動ビザ」が認められるケースがあります。
これは、通常の在留資格では認められない家族の帯同を、個別の事情に応じて特例的に許可する制度です。
特定活動ビザが認められる可能性があるのは、以下のようなケースです。
- 申請者(特定技能1号)がすでに長期間日本に在留しており、日本社会に定着していると判断された場合。
- 人道的な理由(例えば、母国での安全が確保できないなど)がある場合。
このようなケースでは、出入国在留管理庁への申請を通じて、家族の帯同が可能かどうかを判断してもらうことになります。
ただし、特定活動ビザは個別審査となるため、すべての申請が認められるわけではありません。
特定技能1号では原則として家族の帯同は認められていませんが、以下の例外的なケースでは在留が可能になる可能性があります。
- すでに日本に在留している配偶者や子ども
- 日本で生まれた特定技能外国人の子ども
- 特定活動ビザによる特例措置
いずれのケースも、個別の審査が必要となるため、事前に出入国在留管理庁へ相談することが重要です。
特定活動ビザを利用した帯同の条件と手続き
特定活動ビザの概要
特定活動ビザとは、通常の在留資格では対応できない特定の事情がある外国人に対し、日本政府が特別に在留を許可する制度です。
特定技能1号では原則として家族帯同が認められていませんが、特定活動ビザを利用することで配偶者や子どもの在留が認められる場合があります。
このビザは、法務大臣の裁量で発給されるため、すべての申請が認められるわけではなく、個別の事情に応じて審査が行われます。
特定活動ビザが認められるケースは限られていますが、家族と一緒に日本で暮らしたい特定技能1号の外国人にとっては、検討すべき選択肢の一つです。
特定活動ビザ申請の条件
特定活動ビザを申請できる主な条件は、以下の通りです。
- 特定技能1号の外国人が、既に長期間日本で働いていること
- 在留期間が安定していることが求められます。
- 特定技能1号の外国人が、十分な収入を得ており、家族を扶養できること
- 家族が日本で生活するために十分な資金があることが条件になります。
- 家族が特定技能1号の外国人と一緒に生活する必要がある特別な事情があること
- 例えば、子どもがすでに日本の学校に通っている場合や、配偶者が日本国内での治療を必要としている場合など、人道的な理由がある場合に考慮されます。
- 出入国在留管理庁が「特例的に家族帯同を認めるべき」と判断する場合
- これは個別審査によるもので、明確な基準はありません。
必要な書類と手続きの流れ
特定活動ビザの申請には、以下の書類が必要です。
- 申請書(出入国在留管理庁のフォーマットを使用)
- 申請理由書(家族の帯同が必要な理由を詳しく説明)
- 申請者(特定技能1号)の在留カードのコピー
- 収入証明書(給与明細、源泉徴収票など)
- 住民票(家族が日本で生活することを証明)
- 配偶者や子どものパスポートのコピー
- その他、審査官が求める追加書類
申請手続きの流れ
- 出入国在留管理庁(入管)で相談
- 事前に最寄りの出入国在留管理庁へ行き、申請の可否を確認する。
- 必要書類を準備し、申請を提出
- 書類の不備があると審査が長引くため、事前にしっかり準備する。
- 審査(通常1〜3ヶ月)
- 審査期間はケースによって異なるが、1〜3ヶ月ほどかかることが多い。
- 結果通知
- 承認されれば、特定活動ビザが発給され、家族が日本で滞在できるようになる。
注意点
- すべての申請が認められるわけではないため、申請前に十分な準備が必要。
- 特定活動ビザの在留期間は基本的に1年ごとの更新となる。
- 特定技能2号に移行すれば家族滞在が正式に認められるため、長期的に日本で暮らしたい場合は2号への移行を目指すことも重要。
特定技能1号では家族帯同が原則認められませんが、特定活動ビザを利用することで帯同が認められる可能性があります。
ただし、審査は厳しく、収入や滞在期間、人道的な理由などが考慮されるため、事前に入管へ相談し、しっかりと準備を進めることが大切です。
家族と一緒に暮らすための代替案
短期滞在ビザでの訪問
特定技能1号では家族の帯同が原則認められていませんが、「短期滞在ビザ」を利用することで、家族が一時的に日本に来ることは可能です。
短期滞在ビザ(観光ビザ)は、通常15日、30日、90日間の滞在が可能であり、長期的な帯同は難しいものの、一定期間の家族との生活ができます。
申請に必要な主な書類
- 短期滞在ビザ申請書
- パスポート
- 申請理由書(家族訪問のための申請であることを説明)
- 日本在住の特定技能1号の外国人が用意する身元保証書
- 日本の住民票(保証人の日本での住所を証明するため)
- 在職証明書・収入証明書(扶養できる経済的余裕があることを証明)
注意点
- 短期滞在ビザは一時的な訪問に限られ、延長は特別な事情がない限り認められない。
- 観光目的としての入国となるため、日本での就労や子どもの学校への通学はできない。
定期的な一時帰国の活用
家族が長期的に日本に滞在できない場合、特定技能1号の外国人が定期的に母国へ帰国するという選択肢もあります。
特定技能1号の在留資格では「一時帰国」は制限されておらず、雇用主の同意があれば、一定期間の休暇を利用して帰国することが可能です。
特に、雇用契約が長期にわたる場合、年1回以上の長期休暇(数週間〜1ヶ月)を取得するケースもあるため、雇用主と交渉してみるのも一つの方法です。
一時帰国のメリット
- 家族と一定期間直接会うことができる。
- 日本での就労資格を維持しつつ、家族との時間を確保できる。
注意点
- 航空券や滞在費などの経済的負担がかかる。
- 雇用主によっては長期休暇の取得が難しい場合もあるため、事前の相談が必要。
特定技能2号への移行を目指す
長期的に家族と日本で暮らすためには、特定技能2号への移行を目指すことが最も確実な方法です。
特定技能2号は「熟練した技能を持つ外国人」を対象としており、特定の分野(建設業・造船・舶用工業)に限られていますが、家族の帯同が正式に認められ、「家族滞在」の在留資格が取得可能となります。
特定技能2号へ移行するための条件
- 特定技能1号で一定期間就労し、高度な技能を習得する。
- 特定技能2号に該当する職種(建設業・造船・舶用工業)での就労経験を積む。
- 特定技能2号の試験に合格するか、実務経験を積んで技能が認められる。
特定技能2号への移行のメリット
- 家族の帯同が正式に認められる。
- 在留期間の更新に制限がなくなり、長期的な日本での生活が可能になる。
- 将来的な永住権の取得も視野に入れられる。
注意点
- 現時点では、特定技能2号の対象職種が限られているため、他の分野では移行ができない。
- 技能レベルを上げるために長期間の経験や試験合格が求められる。
特定技能1号では家族の帯同は難しいですが、以下のような代替案を活用することで、家族との時間を確保することが可能です。
- 短期滞在ビザで家族が一時的に訪問する
- 特定技能外国人が定期的に一時帰国する
- 特定技能2号へ移行し、正式に家族帯同を認めてもらう
長期的に家族と日本で暮らすためには、特定技能2号への移行が最も確実な方法となるため、事前にしっかりと計画を立てることが重要です。
家族帯同のためにできること
事前に確認すべきポイント
特定技能1号では原則として家族帯同が認められていませんが、例外的に在留が認められるケースや代替手段を活用することで、家族との生活を実現できる可能性があります。
事前に以下のポイントを確認しておくことが重要です。
- 家族の現在の在留資格
- すでに日本に在留している場合、特定活動ビザなどに切り替えられる可能性がある。
- 収入状況と生活基盤
- 家族を扶養するための十分な収入があるかどうかが、特定活動ビザの審査にも影響する。
- 将来的なプラン
- 特定技能2号への移行を視野に入れることで、長期的な家族の帯同が可能になる。
帯同を希望する場合の準備と注意点
家族帯同を希望する場合、以下の準備が重要になります。
- 短期滞在ビザの申請
- 家族と定期的に会うために、観光ビザ(短期滞在ビザ)を利用する。
- 申請には、身元保証書や収入証明書などが必要。
- 特定活動ビザの可能性を探る
- 例外的に帯同が認められるケース(日本で生まれた子どもなど)に該当するか確認。
- 出入国在留管理庁(入管)に相談し、具体的な要件をチェックする。
- 特定技能2号への移行を目指す
- 2号に移行すると、正式に家族滞在ビザが取得できるため、長期的な帯同が可能。
- 2号への移行条件(熟練技能の習得、試験合格など)を確認し、計画的に進める。
今後の制度変更の可能性
現在、特定技能1号では家族帯同が認められていませんが、日本の労働市場の変化や人手不足の深刻化により、制度が変更される可能性もあります。
過去にも技能実習制度や永住権の条件が見直された例があるため、最新の法改正情報を定期的にチェックすることが大切です。
まとめ
特定技能1号の外国人が家族帯同を実現するためには、以下の方法を検討する必要があります。
- 短期滞在ビザを活用し、家族を一時的に呼ぶ
- 特定活動ビザを申請し、例外的に在留許可を得る
- 定期的に一時帰国し、家族と会う機会を増やす
- 特定技能2号への移行を目指し、正式な家族滞在を実現する
長期的に日本で家族と暮らすためには、特定技能2号への移行が最も確実な方法です。
今後の制度変更の可能性も視野に入れながら、計画的に準備を進めていきましょう。