相続手続きにおいて、被相続人の生まれてから死ぬまでの戸籍謄本を取得することは必要不可欠です。しかし、実際に戸籍を収集してみると、思っている以上に複雑で時間がかかることがあります。本記事では、相続における戸籍収集の手順から注意点まで、専門的な知識を分かりやすく解説します。
なぜ相続では生まれてから死ぬまでの戸籍が必要なのか

相続手続きにおいて、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本が求められる理由は、法定相続人を正確に確定するためです。
戸籍収集の法的根拠
民法は第882条で相続の開始を、そして第887条(子)、第889条(直系尊属、兄弟姉妹)、第890条(配偶者)で法定相続人の範囲を定めています。これらの法定相続人を正確に特定し、親族関係を証明するために、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要となります。
戸籍謄本を通じて確認できる主な事項は以下のとおりです。
- 配偶者の存在と婚姻期間
- 子どもの人数と認知の事実
- 養子縁組の有無
- 離婚歴と前婚時の子どもの存在
- 両親や祖父母の情報(子どもがいない場合)
相続で必要となる戸籍の種類と取得範囲

相続手続きでは、被相続人だけでなく相続人の戸籍も必要になります。それぞれの取得範囲を正しく理解しておきましょう。
被相続人について必要な戸籍
- 出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
- 除籍謄本(戸籍から除かれた記録)
- 改製原戸籍謄本(戸籍法改正前の古い様式の戸籍)
相続人について必要な戸籍
相続人については、現在の戸籍謄本が基本的に必要です。提出先(金融機関や法務局など)によっては、発行から3か月以内などと指定されることがあるため、事前に確認しましょう。ただし、相続人が被相続人より先に死亡している場合の代襲相続では、その相続人の出生から死亡までの戸籍も収集しなければなりません。
戸籍の保存期間について
除籍簿・改製原戸籍の保存期間は150年ですが、以前の保存期間に基づいて、既に廃棄されたものもあります。取得できない場合は本籍地の市区町村に確認し、廃棄等を証明する書類が必要か、相続手続きの提出先にも確認してください。
戸籍謄本の具体的な取得手順

相続における戸籍収集は、被相続人の死亡時の本籍地から遡って調査していくのが基本的な流れです。
1. 死亡時の戸籍謄本から開始
まず、被相続人の死亡が記載された現在戸籍謄本を取得します。この戸籍には「従前戸籍」の記載があり、一つ前の戸籍の所在が分かります。
2. 順次過去に遡って戸籍を収集
従前戸籍に記載された本籍地の市町村に対して、除籍謄本や改製原戸籍謄本を請求します。この作業を出生時まで繰り返すことで、連続した戸籍の束を作成できます。
3. 戸籍の読み取りと相続人の確定
収集した戸籍を時系列に並べ、親族関係を整理します。特に注意すべきは以下の記載です。
- 婚姻・離婚の記録
- 出生・死亡の記録
- 認知・養子縁組の記録
- 転籍の記録
戸籍収集で直面する主な困難と対処法

実際の戸籍収集では、様々な困難に直面することがあります。事前に知っておくことで、スムーズな手続きが可能になります。
市町村合併による本籍地の変更
平成の大合併により多くの市町村が統合されたため、戸籍の所在地が現在の住所と異なる場合があります。合併前の旧市町村名で戸籍を管理している場合もあるため、事前に確認が必要です。
古い戸籍の読み取り困難
明治時代や大正時代の戸籍は、旧字体や筆書きで記載されており、読み取りが困難な場合があります。また、記載項目や様式も現在と大きく異なります。
戸籍読み取りのコツ
- 戸籍の様式変更時期を把握する
- 旧字体と新字体の対応表を活用する
- 不明な文字は市町村の担当者に確認する
- 専門家に相談することを躊躇しない
戸籍収集の効率的な方法と費用

戸籍収集は時間と費用がかかる作業です。効率的な方法を知ることで、負担を軽減できます。
本籍地が遠いときは、広域交付を利用できるか確認する
ご自身・配偶者・直系の親族の戸籍は、本籍地以外の市区町村の窓口で請求できる場合があります。顔写真付きの公的な本人確認書類を持参し、請求できる本人が窓口に行く必要があります。広域交付では、郵送や委任状による代理請求はできません。
兄弟姉妹の戸籍は、兄弟姉妹であるという理由だけでは広域交付の対象になりません。戸籍の附票や一部の紙の戸籍も対象外です。さいたま市では、出生から死亡までの連続した戸籍は原則として後日交付と案内されています。来庁前にさいたま市の広域交付の対象・必要書類・交付方法をご確認ください。
郵送での戸籍請求
遠方の市町村の戸籍は、郵送で請求することが可能です。請求時には以下の書類を同封します。
- 戸籍謄本等交付申請書
- 手数料(定額小為替)
- 返信用封筒(切手貼付)
- 請求者の本人確認書類のコピー
- 相続関係を証明する書類
戸籍取得にかかる費用
戸籍謄本1通あたりの手数料は以下のとおりです。
- 戸籍謄本 450円
- 除籍謄本・改製原戸籍謄本 750円
- 戸籍の附票 300円(市町村により異なる)
戸籍収集後の相続手続きへの活用

収集した戸籍は、様々な相続手続きで活用されます。適切に整理・保管することが重要です。
戸籍の情報を基に相続関係説明図を作成します。これにより、複雑な親族関係を視覚的に整理でき、各種手続きで活用できます。関連記事: 相続手続きの詳細については専門サイト
戸籍が必要な主な相続手続き
- 遺産分割協議書の作成
- 銀行預金の相続手続き
- 不動産の相続登記
- 相続税の申告
- 年金の相続手続き
戸籍の原本還付について
相続手続きでは戸籍の原本提出が求められることが多いですが、原本還付の制度を利用することで、戸籍を返却してもらえます。複数の手続きで同じ戸籍を使い回すことができ、費用の節約になります。
原本還付の方法
原本の返却方法は提出先と手続きによって異なります。例えば相続登記では、原本と所定のコピーを併せて提出する方法や、相続関係説明図を利用する方法があります。銀行等へ提出する場合も、その窓口で必要な書類と返却方法を確認してから準備してください。
複数の提出先があるときは、法定相続情報証明制度も確認
法務局で交付される法定相続情報一覧図の写しを利用すると、対応する相続手続きでは戸籍の束を繰り返し提出する負担を減らせます。ただし、戸籍の収集自体が不要になる制度ではありません。利用できるか、ほかに必要な書類は何かを各提出先に確認してください。詳しくは法務局の法定相続情報証明制度の案内をご覧ください。
相続人の確認や連絡で困っている方へ
戸籍を集めても、疎遠な相続人の連絡先が分からず手続きが進まないことがあります。当法人が実際に対応した疎遠な相続人の連絡先を調査した事例では、ヒアリングと公的書類の調査を行い、相続人全員との連絡につなげました。
ご自身で取得した戸籍がある場合は、その内容を確認したうえで不足分や今後の手続きを整理します。依頼できる範囲は相続手続きのサポート案内、ご相談の予約はお問い合わせフォームをご覧ください。
まとめ
相続における生まれてから死ぬまでの戸籍収集は、法定相続人を確定するために欠かせない手続きです。被相続人の死亡時の戸籍から始まり、出生時まで遡って連続した戸籍を収集する必要があります。市町村合併や古い戸籍の読み取りなど困難もありますが、計画的に進めることで確実に収集できます。収集した戸籍は相続関係説明図の作成や各種相続手続きで活用され、原本還付制度を利用することで効率的な手続きが可能になります。戸籍収集は相続手続きの基礎となる重要な作業であり、正確性と継続性を重視して取り組むことが大切です。
