家族が亡くなった際、相続手続きを最初に何から始めればよいのか迷う方は多いでしょう。相続手続きは複雑で、適切な順序で進めないと後々トラブルになる可能性があります。
本記事では、相続手続きを最初に行う際の基本事項から必要書類、具体的な進め方まで、行政書士が詳しく解説します。初めて相続を経験する方でも安心して手続きを進められるよう、実践的な内容をお伝えします。
相続手続きで最初に確認すべき重要事項

死亡届の提出と火葬許可証の取得
相続手続きの最初に行うべきは、死亡届の提出です。死亡の事実を知った日から7日以内に、死亡地・本籍地・住所地のいずれかの市区町村役場に提出する必要があります。
死亡届と合わせて火葬許可申請書を提出し、火葬許可証を取得します。これらの手続きは通常、葬儀社が代行してくれることが多いですが、相続人として内容を把握しておくことが重要です。
遺言書の有無の確認
相続手続きを最初に進める上で、遺言書の存在確認は極めて重要です。遺言書がある場合とない場合では、相続の進め方が大きく異なるためです。
確認すべき場所は以下の通りです。
- 自宅の金庫や重要書類の保管場所
- 銀行の貸金庫
- 公証役場(公正証書遺言の場合)
- 法務局(自筆証書遺言保管制度利用の場合)
遺言書が見つかった場合は、家庭裁判所での検認手続きが必要になることがあります(公正証書遺言と法務局保管の自筆証書遺言を除く)。
相続人の確定と相続財産の調査

法定相続人の確定方法
相続手続きを最初に進める際、法定相続人を正確に把握することが不可欠です。相続人の確定には、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等を取得し、家族関係を詳細に調査します。
配偶者は常に相続人となり、これに加えて以下の順位で相続人が決定されます。配偶者がいる場合は、その順位の相続人と共同で相続することになります。
- 第1順位:子(子が先に死亡している場合は孫などの直系卑属)
- 第2順位:父母(父母が先に死亡している場合は祖父母などの直系尊属)
- 第3順位:兄弟姉妹(兄弟姉妹が先に死亡している場合は甥・姪)
相続財産の把握と評価
相続手続きの最初の段階で、被相続人の財産を漏れなく調査することが重要です。プラスの財産だけでなく、負債も含めて全体像を把握する必要があります。
プラス財産の例
- 不動産(土地・建物)
- 預貯金
- 有価証券(株式・債券)
- 生命保険金
- 退職金
- 動産(車両・貴金属・美術品など)
マイナス財産の例
- 住宅ローン
- クレジットカードの債務
- 税金の滞納
- 借入金
- 未払いの医療費
相続放棄・限定承認の検討

相続放棄を選択すべき場合
相続手続きを最初に検討する際、被相続人の負債が資産を上回る場合は相続放棄を検討する必要があります。相続放棄は、相続開始を知った時から3か月以内に家庭裁判所に申述する必要があります。
相続放棄を行うと、最初から相続人でなかったものとみなされ、一切の相続財産を承継しません。ただし、相続放棄後は撤回できないため、慎重な判断が必要です。
限定承認という選択肢
限定承認は、相続財産の範囲内でのみ被相続人の債務を負担する制度です。財産と負債のどちらが多いか不明な場合に有効な手段ですが、相続人全員の合意が必要で、手続きが複雑になる点に注意が必要です。
必要書類の収集と手続きの準備

基本的な必要書類一覧
相続手続きを最初から円滑に進めるため、以下の書類を早めに収集しましょう。
被相続人に関する書類
- 出生から死亡までの戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍
- 住民票除票
相続人に関する書類
- 戸籍謄本(相続人全員分)
- 住民票(相続人全員分)
- 印鑑登録証明書
財産に関する書類
- 不動産登記事項証明書
- 固定資産税評価証明書
- 預金残高証明書
- 有価証券残高証明書
書類取得時の注意点
戸籍関係書類の取得は相続手続きの最初の難関となることがあります。被相続人が転籍を繰り返している場合、複数の市区町村から書類を取得する必要があり、時間がかかることがあります。
また、古い戸籍は手書きで判読が困難な場合もあるため、不明な点があれば役所の担当者に確認することをお勧めします。
遺産分割協議の進め方

遺産分割協議書の作成
法定相続人が確定し、相続財産の調査が完了したら、遺産分割協議を行います。これは相続手続きの最初の重要な合意形成プロセスです。
遺産分割協議書には以下の内容を明記する必要があります。
- 被相続人の氏名・死亡年月日・最後の本籍・最後の住所
- 相続人全員の氏名・住所・続柄
- 各財産の具体的な分割内容
- 相続人全員の署名・実印押印
協議がまとまらない場合の対処法
相続人間で意見が対立し、協議がまとまらない場合は、家庭裁判所での調停や審判を検討する必要があります。ただし、最初から対立するのではなく、専門家を交えた話し合いで解決を目指すことが望ましいでしょう。
各種名義変更手続きの実施
不動産の相続登記
不動産の相続登記は、相続手続きの最初から重要視すべき手続きです。2024年4月から相続登記が義務化され、相続開始を知った日から3年以内に登記申請を行う必要があります。
登記申請には以下の書類が必要です。
- 登記申請書
- 被相続人の戸籍関係書類
- 相続人の戸籍謄本・住民票
- 遺産分割協議書(法定相続以外の場合)
- 固定資産税評価証明書
金融機関での手続き
預貯金の相続手続きも重要な作業の一つです。金融機関ごとに必要書類や手続き方法が異なるため、最初に各機関に問い合わせて確認することをお勧めします。
一般的に必要となる書類は以下の通りです。
- 金融機関所定の相続届出書
- 被相続人の戸籍関係書類
- 相続人の戸籍謄本・印鑑登録証明書
- 遺産分割協議書
- 通帳・キャッシュカード
税務手続きと申告義務
相続税申告の要否判定
相続手続きを最初に検討する際、相続税の申告が必要かどうかの判定は重要なポイントです。相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人数」で計算されます。
例えば、配偶者と子2人が相続人の場合、基礎控除額は4,800万円(3,000万円+600万円×3人)となり、相続財産がこの金額を超える場合に相続税の申告が必要となります。
準確定申告の必要性
被相続人が自営業者や不動産所得がある場合、死亡した年の1月1日から死亡日までの所得について準確定申告を行う必要があります。これは相続開始を知った日の翌日から4か月以内に行わなければなりません。
専門家への相談タイミング
早期相談のメリット
相続手続きは最初の対応が重要で、早い段階で専門家に相談することで以下のメリットがあります。
- 手続きの全体像を把握できる
- 必要書類の収集を効率的に進められる
- 期限のある手続きを見落とすリスクを回避できる
- 税務上の特例制度を活用できる可能性が高まる
- 相続人間のトラブルを未然に防げる
専門家の選び方
相続手続きの最初から関わる専門家として、以下の資格者が挙げられます。
- 行政書士:遺産分割協議書作成、各種許認可手続き
- 司法書士:相続登記、家庭裁判所手続き
- 税理士:相続税申告、準確定申告
- 弁護士:相続争いの解決、複雑な法的問題
手続きの内容や複雑さに応じて、適切な専門家を選択することが重要です。
まとめ
相続手続きを最初から適切に進めるためには、体系的なアプローチが不可欠です。死亡届の提出から始まり、遺言書の確認、相続人の確定、財産調査、遺産分割協議、各種名義変更まで、多くの手続きが複雑に関連しています。
特に重要なのは、相続放棄(3か月以内)、準確定申告(4か月以内)、相続税申告(10か月以内)、相続登記(3年以内)など、法定期限がある手続きを見落とさないことです。
相続手続きは最初の対応で全体の進行が決まるため、不安がある場合は早めに専門家に相談することをお勧めします。適切なサポートを受けることで、スムーズな相続手続きが可能となり、相続人全員が安心して手続きを完了できるでしょう。
