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COLUMN

外国人介護職員に伝わる申し送りの工夫と用語集の作り方

外国人介護職員への申し送りを確実に伝えるには、「使う言葉を選ぶ」「視覚的に補う」「現場固有の用語集を整備する」という三つの柱が効果的です。日本語能力試験N3〜N4レベルの職員でも理解できる表現に統一し、施設独自の略語や業界用語を言い換えた用語集をあわせて整備することで、伝達ミスや確認の手間を大幅に減らすことができます。

申し送りを外国人職員に伝えるための要点

  • 短い文・やさしい言葉・具体的な数字で話す(例「少し食べました」→「昼食を5割食べました」)
  • 口頭だけに頼らず、記録用紙・ホワイトボード・写真などで視覚的に補足する
  • 施設固有の略語・専門用語は「現場用語集」として一覧化し、誰でも参照できる場所に置く
  • 伝えた内容を本人の言葉で言い返してもらい、理解を確認する習慣をつける
  • 用語集は「使いながら育てる」ものとして、現場スタッフ全員で随時更新する

1. 申し送りで外国人職員が理解しにくい理由

1. 申し送りで外国人職員が理解しにくい理由

介護現場の申し送りには、日本語を母語としない職員が理解しにくい要素が複数重なっています。問題の構造を把握してから対策を立てると、改善の優先順位が明確になります。

理解しにくい要因 具体例
省略・短縮された業界用語 「バイタル低め」「ADL低下」「オムツ交換Ns確認」
話し言葉の崩れ 「ちょっと元気なさそうで〜」「なんか落ち着かなくて」
主語・数値の省略 「食事とれてます」「水分すすめて」
複数の情報が一文に混在 「発熱があって薬飲んで落ち着いたけど様子みて」
施設独自のルール・略語 「Aルーム担当に引き継いで」「夜勤Ns確認済み」

「やさしい日本語」とは

1995年の阪神淡路大震災を契機に広まった概念で、外国人や日本語が苦手な方にも伝わりやすいよう、難しい語を言い換え、短い文で話す表現スタイルを指します。厚生労働省も外国人介護人材の受入れにあたり、職場でのコミュニケーション支援の重要性を案内しています(厚生労働省「外国人介護人材の受入れについて」)。申し送りへの応用は、現場での自主的な取り組みとして実施できます。

2. 申し送りの言葉を整える具体的な工夫

2. 申し送りの言葉を整える具体的な工夫

言葉を「整える」とは、難しくすることではなく、曖昧さを取り除き情報を構造化することです。以下の方法を組み合わせると効果的です。

文の長さと構造を整える

一文に含める情報は「誰が・どうした・どうする」の一つに絞ります。接続詞で文をつなげるのではなく、短い文を並べる形にします。

修正前(仮の例)
「田中さんが昨日から熱があって、今朝は37.8度で薬飲んでもらって少し下がったけど、まだしんどそうなので様子みてあげてください。」

修正後(仮の例)
「田中さんのことをお伝えします。昨日から発熱があります。今朝の体温は37.8度でした。9時に解熱剤を飲みました。今は36.9度です。今日の午後も体温を測ってください。」

数値と時刻を必ず入れる

「少し」「あまり」「だいぶ」などの程度を表す言葉は、判断基準が人によって異なります。「食事を6割食べました」「15時に排泄介助をしました」のように数値と時刻を入れると、受け取る側が追加確認しなくて済みます。

視覚的な補足を活用する

口頭の申し送りだけでなく、以下のような視覚補助を組み合わせます。

  • 申し送りシートの書式を統一し、記入欄ごとに「体温」「食事量」「排泄」などの見出しを設ける
  • ホワイトボードに当日の特記事項と担当者名を書き、誰でも確認できるようにする
  • 創傷・皮膚トラブルなど口頭で伝えにくい情報は写真や図で補足する
  • 緊急度を色分け(赤・黄・白など)で示し、優先して確認すべき内容を一目でわかるようにする

理解確認を習慣にする

「わかりましたか」と聞くだけでは、本当に伝わったかを確かめられません。「今日の午後、田中さんについて何をしますか」のように、具体的な行動を本人の言葉で話してもらいます。答えが不正確であれば、その場で言い直して再確認します。この習慣は外国人職員に限らず、申し送り全体の質を高めます。

3. 現場用語集の作り方

用語集は一度完成させるものではなく、現場で使いながら育てていくものです。以下の手順で最小限の形から始め、随時追加していくと運用が続きます。

収集する用語の選び方

まず申し送りや記録に実際に登場する言葉を洗い出します。外国人職員本人に「わからなかった言葉」を週単位でメモしてもらうと、優先して収録すべき言葉が自然に集まります。

  • バイタルサイン・ADL・IADLなどの医療・介護専門用語
  • 施設固有の略称(例「Ns」「CH」「ショート」など)
  • 敬語・丁寧語の崩れた形(例「〜してあげて」「〜しといて」)
  • 感覚的な表現(例「ぼんやりしている」「落ち着かない」)

用語集の項目構成(仮の例)

下記は架空の記入例です。実際の施設の用語に合わせて作成してください。

現場で使われる言葉 やさしい言い換え 補足・注意点
バイタル 体温・血圧・脈拍・酸素の数字 測定後は記録シートに書く
ADL低下 自分でできる動作が減った 具体的に「歩けない」「食べにくい」など確認
ショート 数日間だけ泊まる利用者(短期入所) 曜日によって担当が変わる場合がある
水分すすめて 利用者ごとの指示を確認し、決められた飲み物と量で水分を勧める とろみが必要な場合は、利用者ごとに確認された濃さと作り方に従う
様子みて 1時間ごとに声をかけて確認する 変化があればすぐ担当Nsに伝える
Ns 看護師 夜間はナースコールで連絡

用語集を使いやすくする形式の工夫

  • 紙・ラミネート加工して申し送り場所や詰所に貼る(いつでも見返せる)
  • 施設の内部チャットやグループウェアに電子版を置く
  • 利用者ごとの注意事項(とろみ、アレルギー等)は用語集とは別に個人シートで管理する
  • 更新日と更新者を記載し、どのバージョンが最新かわかるようにする

多言語対応を追加する場合の考え方

用語集に母国語の訳を添える場合、機械翻訳だけに頼ると介護特有の文脈がずれることがあります。本人に訳文を確認してもらい、意味のずれがないか一緒に検討するプロセスを入れると精度が上がります。翻訳を入れる場合でも、日本語の表記を主にし、翻訳はあくまで理解補助として位置づけます。

日本語教育との役割の違い

現場用語集は「すぐに業務で使う言葉を参照するツール」です。体系的な日本語学習の代替ではなく、学習と並行して使うものです。介護の場面フレーズを繰り返し練習できる学習ツールを日々の業務と組み合わせると、用語集で覚えた言葉の定着につながります。
受入れ後の支援・日本語教育の仕組みについて(合同会社ロータス)

4. 申し送りシートの書式を整備する

口頭の申し送りを補完する記録シートの書式を統一すると、誰が記録しても同じ情報が揃います。外国人職員が記録者になる場合にも、書式が整っていれば記入漏れを防ぎやすくなります。

書式に含めるとよい項目

  • 記録日時・担当者名・利用者名(または番号)
  • バイタル(体温・血圧・脈拍・SpO₂)の記入欄(単位を明記)
  • 食事・水分(量を数字で記入)
  • 排泄(回数・状態)
  • 特記事項(変化・受診・訴えなど)
  • 次の担当者への申し送り事項(1〜3点に絞る)

記入欄に選択肢(チェックボックス・プルダウン)を設けると、文章を書く負担が減り、外国人職員も記入しやすくなります。一方、自由記述欄も一定量残し、伝えるべき変化を書ける余白を確保します。完全なチェックリスト形式にすると、想定外の変化が記録に残りにくくなるため注意が必要です。

5. 受入れ施設が用語集整備と並行して確認しておくこと

申し送りの工夫と用語集の整備は現場主導で始められますが、外国人職員の受入れ体制全体との連動を意識すると効果が高まります。

  • 入職時のオリエンテーションで用語集の存在と使い方を説明する
  • 申し送りの言葉を整えることを、外国人職員だけでなく全スタッフの共通ルールにする
  • 日本語学習と現場の指導は役割を分け、それぞれの担当者を明確にする
  • 業務手順や施設ルールの説明は用語集とは別の「業務マニュアル」として整備する

在留手続き・生活支援・日本語教育の各担当と施設の指導体制がどう連携するかを確認しておくと、申し送り以外の場面でも情報のやりとりがスムーズになります。採用から就業開始までの流れ(合同会社ロータス)

6. よくある質問

Q. 申し送りのたびに言葉を選ぶ時間が増えないか心配です。

A. 最初は慣れるまで時間がかかりますが、申し送りシートの書式を統一し、よく使う表現を「標準フレーズ集」としてまとめておくと、個人の判断に委ねる部分が減り、全体の申し送り時間は安定します。外国人職員への配慮として始めた取り組みが、申し送り全体の質の底上げにつながる場合があります。

Q. 用語集に収録する言葉はどのくらいの量が適切ですか。

A. 最初から網羅しようとすると作成に時間がかかり、更新が止まりがちです。申し送りと記録で毎日使う言葉を50〜100語程度から始め、わからなかった言葉を追加する形で運用するのが現実的です。量よりも「すぐ引ける・すぐ更新できる」形式を優先してください。

Q. 外国人職員が記録を書くときの日本語ミスはどう扱えばよいですか。

A. 記録の誤りは安全管理に関わるため、見つけたら都度確認し、正しい表現を一緒に確認します。その際、誤りを指摘するだけでなく「この言葉はこう書くと伝わりやすい」と代替表現を示すと、本人の学習にもつながります。繰り返し出てくる誤りは用語集の「注意事項」欄に追加すると、他のスタッフも共有できます。

Q. 申し送りの工夫は特定技能の支援計画に含めるべきですか。

A. 特定技能の登録支援機関が行う支援(事前ガイダンス・日本語学習・定期面談等)と、施設内の申し送り改善・用語集整備は別の取り組みです。申し送りの工夫は施設の業務改善として実施するものであり、登録支援機関の義務的支援とは区別して考えます。在留制度上の支援内容と現場教育の役割分担については、登録支援機関と事前に確認しておくことをお勧めします。特定技能介護の人材紹介と支援体制の確認(合同会社ロータス)

まとめ

外国人介護職員に伝わる申し送りを実現するには、話し方・書式・用語集の三つをセットで整備することが効果的です。

  • 一文一情報・数値と時刻を必ず入れる・やさしい言葉への言い換えを習慣にする
  • 申し送りシートの書式を統一し、口頭の補完として視覚的な記録を活用する
  • 現場で実際に使われる略語・専門用語を用語集にまとめ、更新できる仕組みで運用する
  • 伝えた内容を本人の言葉で確認する習慣を、外国人職員だけでなく全体のルールにする
  • 用語集と日本語学習・業務マニュアルは別物として役割を分けて整備する
編集・掲載:合同会社ロータス
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