特定技能外国人の受入れにあたっては、支援計画の担当者(支援責任者・支援担当者)と雇用契約の担当者(労務・人事担当など)が、それぞれ異なる情報を持ちながら同じ一人の外国人に関わります。この二者間で情報が共有されていないと、支援計画の内容と実際の労働条件が食い違ったり、在留資格の更新審査に影響する記録の漏れが生じたりするリスクがあります。本記事では、両担当者が実務上どの情報を共有すべきかを、確認項目と役割分担の観点から整理します。 関連する内容は「特定技能外国人の受入れ企業が変わる場合(転籍)の手続きと関係者の役割」でも解説しています。
支援計画と雇用契約の担当者間で共有すべき情報:要点
- 雇用契約の内容(報酬・労働時間・業務内容)は支援計画の事前ガイダンスや定期面談と直接連動するため、双方が同じ情報を持っている必要がある
- 労働条件の変更は、支援計画の記載内容や届出に影響するため、変更のたびに担当者間で共有する仕組みが必要
- 定期面談の結果や相談・苦情の受付記録は、労務管理の観点からも重要な情報であり、担当をまたいで管理されるべき
- 個人情報を含む情報の共有は、送付先・閲覧者・共有方法を事前に決めておくことが前提
1. なぜ担当者間の情報共有が必要なのか

特定技能1号の外国人を受け入れる企業は、出入国管理及び難民認定法(入管法)第2条の5および関連省令に基づき、支援計画を策定・実施する義務を負います。支援計画には義務的支援10項目が含まれており、そのうち「事前ガイダンス」「定期的な面談」「相談・苦情対応」といった項目は、雇用契約の内容と切り離して実施することができません。
たとえば事前ガイダンスでは、労働条件(報酬・労働時間・業務内容)を本人が理解できる言語で説明することが求められます。この説明が雇用契約書の内容と一致していなければ、支援計画の実施として認められない可能性があります。逆に、雇用契約の担当者が面談記録や苦情対応記録を把握していなければ、労働条件の問題が見過ごされるリスクがあります。
支援責任者・支援担当者とは
自社で支援する場合は受入れ企業が、登録支援機関へ全部委託する場合は委託先が、必要な支援責任者・支援担当者を選任します。支援責任者は支援業務全体を管理します。支援担当者は、支援責任者の指揮のもとで実際の支援業務を担当します。いずれも、役職名ではなく実際の業務遂行能力・経験が要件の判断基準となります。兼務の可否は肩書だけでは判断できません。対象外国人への指揮命令権や監督関係を確認し、中立な立場で支援できることなどの基準を満たす必要があります。
2. 共有が必要な情報の種類と担当者ごとの役割

以下の表は、支援計画担当者と雇用契約担当者のそれぞれが主に管理する情報と、双方で共有が必要な情報を整理したものです。これは一般的な役割の整理であり、企業の組織体制によって実際の分担は異なります。
| 情報の種類 | 主な管理担当 | 共有の必要性 |
|---|---|---|
| 雇用契約書・雇用条件書(報酬・労働時間・業務内容) | 雇用契約担当(人事・労務) | 支援計画の事前ガイダンス・面談内容に直接反映されるため必須 |
| 支援計画書の記載内容(10項目の方法・実施予定) | 支援計画担当(支援責任者等) | 雇用契約の変更時に計画内容の見直しが必要なため共有 |
| 支援実施記録(ガイダンス・送迎・面談等) | 支援計画担当 | 労務管理・届出の根拠として雇用契約担当も把握が望ましい |
| 定期面談の結果・確認事項・対応事項 | 支援計画担当 | 労働条件に関する問題が含まれる場合は雇用契約担当へ連携が必要 |
| 相談・苦情の受付記録と対応内容 | 支援計画担当 | 内容によっては労務・人事対応が必要となるため共有の仕組みが必要 |
| 在留カードの期限・在留資格の種別 | いずれかが管理(企業による) | 在留期限の管理は申請準備と連動するため双方が把握 |
| 登録支援機関との委託契約の状況 | 雇用契約担当または管理部門 | 支援計画担当者が委託範囲を把握していないと実施漏れのリスクがある |
| 年1回の定期届出の内容・提出状況 | 支援計画担当(届出義務者は企業) | 届出には雇用契約情報が含まれるため、記載内容を雇用契約担当が確認 |
登録支援機関に委託している場合の注意
支援の全部または一部を登録支援機関に委託している場合、支援実施記録は登録支援機関側が作成・管理するケースが多くなります。ただし、現在の定期届出は受入れ企業が行います(入管法第19条の18)。対象期間は4月1日から翌年3月31日までで、翌年度の4月1日から5月31日までに年1回提出します。旧制度の四半期ごとの届出と区別し、随時届出は別途期限を管理してください。登録支援機関が記録を持っていても、企業の担当者がその内容を確認・把握できていない状態では、届出の精度に影響します。委託している場合も、どの情報をどのように共有するかを委託契約の段階で取り決めておくことが実務上の重要なポイントです。 関連する内容は「特定技能の登録支援機関が行う定期届出|種類・提出時期・記載内容の確認」でも解説しています。
3. 雇用契約の変更が生じたとき、支援計画担当者に伝えるべき情報
労働条件に変更が生じた場合、支援計画の内容や届出に影響が及ぶ可能性があります。雇用契約の担当者から支援計画の担当者へ速やかに共有すべき変更情報を以下に整理します。
- 報酬・給与の変更:支援計画の事前ガイダンスに記載した報酬と相違が生じる場合、支援計画の修正・届出への反映が必要になる可能性がある
- 労働時間・勤務形態の変更:定期面談で本人に確認すべき事項が変わるため、面談担当者が把握している必要がある
- 業務内容・配置の変更:特定技能の在留資格で認められた活動の範囲内かどうかを確認するうえで、支援計画担当者・申請担当者への連絡が必要
- 勤務先(事業所)の変更:届出が必要となる変更事項に該当する場合があり、申請担当への速やかな連絡が必要
- 雇用契約の終了・転籍の予定:支援委託契約の終了手続きや届出(入管法第19条の18)に関わるため、登録支援機関も含めて早期に情報共有が必要
出入国在留管理庁「特定技能外国人受入れに関する運用要領」では、受入れ機関が特定技能雇用契約の内容を変更した場合や、雇用関係が終了した場合の届出義務が定められています。届出は所定の期限内に出入国在留管理庁へ提出することが求められており、届出漏れは受入れ機関としての義務違反となる可能性があります。最新の運用要領および届出様式は出入国在留管理庁の公表資料(特定技能運用要領)でご確認ください。
4. 定期面談・相談記録の共有と個人情報の取り扱い
定期面談は、義務的支援の一つであり、支援責任者または支援担当者が3か月に1回以上、本人および直属上司等と実施することが求められています。面談で把握した情報は記録として残す必要がありますが、その内容は個人情報を含むため、共有の範囲と方法を事前に整理しておくことが重要です。
面談記録を担当者間で共有する際の確認事項
- 閲覧できる担当者の範囲を明確にする(支援責任者・支援担当者・人事担当者など)
- 記録の保管場所と送付方法(メール・共有フォルダ等)を定め、不特定の者が閲覧できない状態にする
- 登録支援機関が面談を実施している場合、記録の共有方法を委託契約時に取り決める
- 面談で把握した労働条件に関する問題(不払い・過重労働等)は、雇用契約担当者への連絡ルートを事前に設けておく
相談・苦情記録の共有範囲
相談・苦情対応の記録は、支援計画担当者が管理する一方で、内容が労働条件・職場環境に関わる場合は雇用契約担当者への連携が必要になります。どのような相談を人事・労務にエスカレーションするかのルールを、担当者間であらかじめ決めておくことが実務上の混乱を防ぎます。
5. 情報共有を実務に落とし込むための確認リスト
以下は、支援計画担当者と雇用契約担当者が受入れ開始前および運用中に確認しておくべき事項の一覧です。企業の体制・規模に応じて適宜調整してください。
受入れ開始前に確認する事項
- 雇用契約書・雇用条件書の内容を支援計画担当者が把握しているか
- 支援計画書に記載した報酬・業務内容が雇用契約書と一致しているか
- 事前ガイダンスの実施担当者と実施方法(言語・方法)が決まっているか
- 登録支援機関への委託範囲と自社担当範囲の境界が明確になっているか
- 個人情報(在留カード番号・住所・パスポート等)の管理担当と保管方法が決まっているか
- 担当者間の連絡手段(メール・社内システム等)と情報共有のルールが整備されているか
運用中(受入れ後)に継続して確認する事項
- 3か月ごとの定期面談の実施日・確認内容・対応事項が記録されているか
- 面談で把握した労働条件の問題を雇用契約担当者へ連携するルートが機能しているか
- 雇用契約の変更(報酬・業務内容等)が生じた際に支援計画担当者へ連絡されているか
- 年1回の定期届出の内容を雇用契約担当者が確認できているか
- 在留カードの期限管理が誰かの担当として明確になっているか
- 担当者が交代した際に、記録・経緯・次の確認事項が引き継がれる仕組みがあるか
登録支援機関が間に入る場合の三者間の情報整理
受入れ企業が登録支援機関に支援を委託している場合、受入れ企業の雇用契約担当者・連絡窓口と、委託先の支援責任者・支援担当者の間で情報を共有します。全部委託の場合に、受入れ企業にも別の支援責任者の選任が当然必要であるという意味ではありません。誰がどの情報を持ち、どのタイミングで共有するかを委託開始時に整理しておかないと、届出の記載内容に一貫性がなくなったり、本人への説明が食い違ったりするリスクがあります。登録支援機関との委託契約には、情報共有の方法と頻度についての取り決めも含めることが望ましいです。
6. よくある質問(FAQ)
Q. 支援計画担当者と雇用契約担当者が同じ人でも問題ありませんか?
A. 人事・労務担当という肩書だけでは兼務できるとは判断できません。対象外国人への指揮命令権を持つなど監督する立場にある者は適格ではなく、中立に支援を実施できる立場であることなどの基準を確認する必要があります。ただし、同一人物が担当する場合でも、支援計画に基づく記録と雇用契約に基づく管理記録はそれぞれ目的が異なるため、記録の項目と保管を混在させないよう整理しておくことが重要です。担当者が一人の場合こそ、何をいつ確認したかの記録を残す習慣が届出の精度を支えます。
Q. 雇用条件が変わった場合、どこに届け出る必要がありますか?
A. 特定技能雇用契約の内容に変更が生じた場合、受入れ機関は軽微な変更等の届出不要の取扱いも含め、出入国在留管理庁への届出の要否を確認します(入管法第19条の18)。届出の様式・期限・対象となる変更事項の詳細は、出入国在留管理庁が公表する運用要領および届出様式でご確認ください。変更の内容によっては在留資格の変更許可申請が必要になる場合もあるため、申請担当者または行政書士等の専門家への相談も選択肢のひとつです。 関連する内容は「特定技能1号の在留資格認定申請で必要な書類を種類別に整理する」でも解説しています。
Q. 定期面談の記録を人事担当者と共有する際、どこまで伝えるべきですか?
A. 面談記録は個人情報を含むため、共有する範囲は業務上の必要性に基づいて限定することが基本です。労働条件やハラスメントの相談を雇用契約担当者へそのまま伝えると、相談者が不利益を受けるおそれがあります。本人の意向・秘密の保護・必要な対応を確認し、必要に応じて行政機関等への相談や通報も検討します。私生活上の事情を一律に共有する必要はありません。共有の判断基準(何を伝え、何は支援担当者内に留めるか)を事前にルール化しておくことが、個人情報の適切な管理と支援の実効性を両立させる実務上の工夫です。
まとめ
特定技能外国人の受入れにおいて、支援計画の担当者と雇用契約の担当者が持つ情報は相互に依存しています。支援計画の内容は雇用契約書と一致している必要があり、定期面談や相談記録は労務管理にも関わり、雇用契約の変更は支援計画や届出に波及します。
- 雇用契約の内容(報酬・労働時間・業務内容)は支援計画担当者と共有する
- 雇用条件の変更は支援計画担当者・申請担当者へ速やかに連絡する仕組みを設ける
- 定期面談・相談記録は、個人情報の取り扱いルールを定めたうえで担当者間で共有する
- 登録支援機関を利用している場合は、三者間の情報共有の方法を委託開始時に取り決める
- 担当者が交代しても記録・経緯が引き継がれる体制を整えておく
支援計画と雇用契約の担当者間の情報共有は、制度の義務を果たすための基盤であると同時に、在留期間の更新審査においても実施記録の一貫性として評価されます。体制の整備や申請の準備に不明な点がある場合は、特定技能の在留申請・登録支援機関の運営支援を行っている行政書士法人ロータスのサービスページもあわせてご参照ください。また、支援計画の10項目の内容と記録方法については特定技能1号の支援計画の内容と実務上のポイントを整理した記事も参考になります。

