特定技能外国人が受入れ企業を変わる場合(転籍)、転籍先の企業は新たに在留資格変更許可申請を行う必要があります。転籍元・転籍先・本人・登録支援機関のそれぞれに届出や手続きの義務があり、申請中の就労可否や登録支援機関の引き継ぎも含めて整理しておくことが不可欠です。この記事では、転籍という変更時の手続きに絞って、各関係者の役割と確認事項を整理します。
転籍時の手続き:関係者ごとの要点
- 転籍先(新受入れ企業)は、在留資格変更許可申請を出入国在留管理局に提出する必要がある
- 転籍元(旧受入れ企業)は、雇用契約の終了等に関する届出義務がある
- 在留資格変更許可が下りるまでの間、特定技能外国人は原則として新受入れ先での就労を開始できない
- 登録支援機関が変わる場合は、支援計画・支援記録の引き継ぎ確認が必要になる
1. 特定技能における転籍とは何か
特定技能制度における「転籍」とは、就労中の特定技能外国人が、現在の受入れ企業との雇用契約を終了し、別の受入れ企業との間で新たに雇用契約を締結することを指します。転職・転籍ともに呼ばれますが、制度上は「受入れ機関の変更」として扱われます。
特定技能1号における転籍の可否の考え方
特定技能1号は、同一の特定産業分野内であれば、受入れ企業を変更すること自体は制度上禁止されていません。ただし、企業が変わることは在留資格の活動内容の変更(雇用する機関の変更)を伴うため、在留資格変更許可申請が必要となります。出入国在留管理庁「特定技能外国人の受入れに関する運用要領」では、受入れ機関に変更が生じた場合の届出義務と申請手続きが定められています。
なお、特定技能2号については在留期間の更新が可能な在留資格ですが、受入れ企業が変わる際の手続きの基本的な考え方は1号と同様です。各分野の特性や要件の詳細は、分野別の運用要領を確認してください。
2. 転籍が発生する主なケースと関係者への影響
転籍が発生する背景はさまざまです。受入れ企業側の事情(事業縮小・廃業・分野変更)によるものと、外国人本人の意思によるものの両方があります。どちらの場合でも、手続きの流れは基本的に同じです。
| 発生ケース | 主な契機 | 関係者への主な影響 |
|---|---|---|
| 企業都合による転籍 | 廃業・事業縮小・受入れ停止など | 転籍元は契約終了の届出。転籍先が速やかに見つかるかが本人の在留管理上の課題になる |
| 本人都合による転籍 | 待遇改善・職場環境の変化など | 本人の意思確認が前提。転籍元との契約終了タイミングと申請開始のタイミングを調整する必要がある |
| 登録支援機関の都合 | 登録支援機関が業務を継続できなくなる場合など | 支援体制の変更が生じるが、受入れ企業が変わらない場合は転籍には該当しない |
転籍と「受入れ機関の変更」の区別
受入れ企業内での異動(同一法人内の事業所変更等)は、受入れ機関の変更には該当しない場合があります。一方、別法人への雇用契約の変更は、たとえグループ企業間であっても受入れ機関の変更として扱われるのが原則です。判断に迷う場合は、管轄の出入国在留管理局に確認することを推奨します。
3. 転籍元(旧受入れ企業)が行う届出と契約終了の手続き
雇用契約が終了した転籍元の受入れ企業には、出入国在留管理庁への届出義務があります。出入国管理及び難民認定法(入管法)第19条の17に基づき、特定技能外国人との雇用関係が終了した場合、受入れ機関は届出を行う必要があります。
転籍元が行う主な対応
- 雇用契約終了の届出:契約終了日から14日以内に、出入国在留管理庁が定める「受入れ困難に係る届出書」または「契約終了に係る届出書」を提出する(届出書の種類は終了理由によって異なる)
- 本人への説明と引き継ぎ支援:運用要領では、受入れ機関が不当に転籍を妨害することは認められない旨が示されています。本人が次の就労先を探す際に必要な情報(在留カード、パスポート等)を適切に返還・提供することが求められます
- 登録支援機関への連絡:登録支援機関を利用していた場合は、支援委託契約の終了手続きを登録支援機関と行う
転籍元の届出漏れに注意
契約終了後に届出を怠ると、受入れ機関としての義務違反となる可能性があります。廃業等により担当者が不在になるケースでは、登録支援機関が届出の対応状況を確認しておくことが望ましいです。
4. 転籍先(新受入れ企業)が申請する在留資格変更の流れ
転籍先の企業は、特定技能外国人を受け入れるにあたり、在留資格変更許可申請を出入国在留管理局に提出します。これは、入管法第20条に基づく申請です。許可が下りて初めて、新受入れ企業での就労が可能になります。
転籍先が準備する主な書類
- 在留資格変更許可申請書
- 転籍先の雇用契約書および報酬を証明する書類
- 転籍先の特定技能所属機関に関する証明書類(法人登記・納税・社会保険関係など)
- 支援計画書(登録支援機関に委託する場合は委託契約書)
- 分野ごとに求められる固有の書類(所管省庁への申請書類等)
在留資格変更許可申請と在留資格認定証明書の違い
すでに特定技能の在留資格を持って国内にいる外国人が受入れ企業を変える場合は、「在留資格変更許可申請」を行います。一方、海外から初めて招へいする場合は「在留資格認定証明書交付申請」が必要です。転籍は就労中の変更であるため、変更申請が適用されます。
申請から許可までの期間と実務上の注意
審査期間は案件の内容や管轄局の繁忙状況によって異なります。申請中に在留期限が到来する場合は、在留期間更新許可申請と並行して検討が必要になることもあります。当事務所(行政書士法人ロータス)では、転籍のタイミングで在留期限も近いというご相談を受けるケースがあり、申請の種類と優先順位の整理から始めることが多いです。
5. 登録支援機関の役割:転籍前後の支援体制の引き継ぎ確認
転籍に伴い登録支援機関が変わる場合、新旧の登録支援機関それぞれに届出と情報引き継ぎの対応が生じます。
旧登録支援機関の対応
- 受入れ企業との支援委託契約の終了に伴い、登録支援機関としての届出義務(出入国在留管理庁「特定技能外国人の受入れに関する運用要領」に基づく届出)を果たす
- 支援の実施記録・面談記録・支援計画の写しを適切に保管し、引き継ぎに備える
新登録支援機関が引き継ぎで確認すべき事項
| 確認事項 | 内容 |
|---|---|
| 支援計画書 | 転籍先での新しい支援計画書を策定する。旧計画書は参考資料として確認 |
| 支援実施記録 | 過去の面談・支援の記録。法定の保存義務があるため旧機関が保管するが、本人の状況把握のために内容の概要を確認 |
| 在留期限・在留カード番号 | 在留期限の把握は更新申請のアラート管理に直結する |
| 本人の生活状況・相談事項 | 住居・家族構成・健康状態など、継続的支援に必要な情報 |
| 過去の届出状況 | 定期届出が適切に行われていたか、未解決の懸案がないかを確認 |
登録支援機関の変更届出について
登録支援機関が変わる場合、受入れ機関(転籍先)は所定の届出を行う必要があります。支援委託先の変更は在留資格変更申請の添付書類にも反映されるため、申請準備と並行して登録支援機関の選定を進めることが実務上のポイントです。
6. 転籍中の就労空白期間と在留管理上の注意点
在留資格変更許可申請が受理されてから許可が下りるまでの期間、外国人本人は申請中の状態となります。この申請中の期間(いわゆる「申請中の特例」)に関しては、入管法第20条第6項に基づく取扱いがあります。
出入国管理及び難民認定法第20条第6項では、在留資格変更許可申請が在留期間内になされた場合、在留期限経過後も許可または不許可の処分がある日まで、引き続き従前の在留資格で在留できる旨が定められています。
ただし、これは「従前の在留資格での在留継続」であり、変更申請中の期間に転籍先(新受入れ企業)での就労を開始できるかどうかは、従前の在留資格の内容によります。特定技能の在留資格変更許可申請中は、まだ転籍先との雇用関係が在留資格として認められていないため、原則として転籍先での就労開始は許可後となります。
就労空白期間中の生活への配慮
- 申請期間が長引く場合、本人の生活費・住居の確保が課題になることがある
- 転籍元での就業終了後、転籍先での就労開始までの期間が生じる場合は、本人への十分な説明と経済的な準備の確認が支援機関・受入れ企業双方に求められる
- 転籍元が廃業等で雇用継続が困難な場合は、転籍先の確保と申請準備を並行して進め、空白期間が最小限になるよう調整することが望ましい
転籍申請中の在留期限到来への対応
変更申請中に在留期限が到来する場合、上記の特例規定により在留自体は継続しますが、管轄の出入国在留管理局への確認を経て対応方針を決めることを推奨します。期限管理は登録支援機関が担う重要な実務の一つです。
よくある質問(FAQ)
Q. 転籍の際、在留資格変更申請は必ず必要か?
A. 受入れ機関(雇用する法人・事業者)が変わる場合は、原則として在留資格変更許可申請が必要です。これは、特定技能の在留資格が特定の受入れ機関との雇用契約を前提とした活動に紐づいているためです。在留期間の途中であっても申請が必要な点に注意が必要です。
Q. 転籍元の企業は転籍後にどのような届出が必要か?
A. 雇用契約が終了した場合、受入れ機関は入管法第19条の17に基づき、契約終了に関する届出を行う義務があります。届出の期限や書式については出入国在留管理庁の公表資料を確認してください。届出を怠ると法令上の義務違反となる可能性があります。
Q. 転籍の申請中(許可待ち期間)に本人は就労できないのか?
A. 在留資格変更許可申請中は、従前の在留資格の範囲での在留継続が認められますが、変更後の受入れ先(転籍先)での就労は、原則として許可が下りた後に開始できます。申請中の就労開始を前提としたスケジュールは組まないことが安全です。具体的な状況については管轄の出入国在留管理局に確認することを推奨します。
Q. 登録支援機関が変わる場合、引き継ぎで最低限確認すべきことは何か?
A. 新しい登録支援機関は、少なくとも①在留期限・在留カード情報、②新受入れ企業での支援計画書の内容、③本人の生活状況・相談事項の概要、④過去の定期届出の実施状況を把握しておく必要があります。法定の支援実施記録は旧機関が保管義務を持ちますが、本人の状況把握のために概要の情報共有を求めることが実務上有効です。
まとめ
特定技能の転籍手続きで確認すべき要点
- 転籍先(新受入れ企業)は在留資格変更許可申請(入管法第20条)を行う。許可が下りるまで転籍先での就労は開始できない
- 転籍元(旧受入れ企業)は、雇用契約終了に関する届出(入管法第19条の17に基づく)を期限内に行う
- 登録支援機関が変わる場合は、在留期限・支援計画・本人の生活状況の情報引き継ぎを転籍先申請の準備と並行して進める
- 申請中に在留期限が到来するケースは特に注意が必要で、管轄の出入国在留管理局への確認が望ましい
- 就労空白期間が生じる可能性があるため、本人への事前説明と生活面の準備確認が支援機関・受入れ企業双方に求められる
