特定技能の申請費用を見積もるときは、「報酬」「実費」「翻訳費」の三つを区別して確認することが出発点になります。これらをまとめて「申請費用」と呼んでいる場合でも、内訳の分け方は事務所によって異なるため、比較する前に何が含まれているかを項目単位で確認する必要があります。
申請費用を見積もるときの要点
- 申請報酬・入管手数料・翻訳費は別々の費用であり、提示された金額に何が含まれるかを最初に確認する
- 申請の種類(認定・変更・更新)によって報酬額と必要書類が異なるため、自分のケースがどれに当たるかを先に整理する
- 翻訳費は翻訳ページ数・言語・依頼先によって変動するため、見積り時点で確認できる資料の量をあらかじめ把握しておくと比較しやすい
- 入管の手数料は申請種別により無料のものもあるため、「実費」の内訳を必ず確認する
- 令和8年10月1日以後に申請を行い在留資格の変更の許可、在留期間の更新の許可または永住許可を受ける外国人については、改定後の手数料が適用される(出入国在留管理庁発表)
- 書類がすべて揃っていない段階でも相談は可能なため、準備状況を整理した上で問い合わせることができる
1. 報酬・実費・翻訳費はそれぞれ何を指すか

申請費用を正確に把握するには、まず三つの費用区分を理解することが必要です。混同したまま見積りを取ると、後から追加費用が発生したり、他の事務所との比較ができなくなったりします。
| 費用の区分 | 内容の説明 | 注意点 |
|---|---|---|
| 申請報酬 | 行政書士等の専門家が申請書類の案内・確認・作成・申請取次を行うことに対する対価 | 業務範囲(追加資料対応を含むかどうかなど)によって金額が異なる |
| 実費(入管手数料等) | 出入国在留管理庁への申請に伴う手数料、証明書類の取得費用、郵送費など | 申請の種類によって手数料が発生しない場合がある。証明書の取得は依頼者側で行う場合が多い。令和8年10月1日以降は手数料額が改定されているため最新の金額を確認する |
| 翻訳費 | 外国語で作成された書類を日本語に翻訳する、または日本語書類を外国語に翻訳する費用 | 翻訳先・翻訳元の言語、ページ数、翻訳者の資格要件の有無によって金額が変動する |
「申請報酬に含まれる業務」とは何か
申請報酬は一律に定義されておらず、どの業務が含まれるかは依頼先ごとに異なります。一般的には「必要書類の案内・確認」「申請書類の作成」「申請取次」が含まれますが、「入管からの追加資料対応」「証明書の取得代行」「翻訳」などが別料金となるケースもあります。見積書を受け取ったときは、含まれる業務と含まれない業務を箇条書きで確認するのが最も確実な方法です。
2. 申請の種類ごとに費用の構造はどう違うか

特定技能の申請には「在留資格認定証明書交付申請(認定申請)」「在留資格変更許可申請(変更申請)」「在留期間更新許可申請(更新申請)」の三つがあり、それぞれ対象となる状況と必要書類の量が異なります。申請の種類が変わると、準備すべき書類の数や翻訳が必要な資料の量も変わるため、費用の総額に影響します。 関連する内容は「技能実習2号から特定技能1号への移行:手続きの流れと企業側の準備を確認する」でも解説しています。
三つの申請の違い
- 認定申請 海外にいる外国人を新たに招へいする場合に行う手続き。許可されると在留資格認定証明書が交付され、在外日本大使館でのビザ申請につながる
- 変更申請 日本国内に在留している外国人が、現在の在留資格から特定技能に変更する場合や、特定技能外国人が所属機関を変更する場合に行う手続き
- 更新申請 現在の在留期限を迎える特定技能外国人が、引き続き就労するために行う手続き
認定申請と変更申請は、新たな雇用関係を形成する申請であるため、受入れ企業・外国人本人・登録支援機関それぞれの書類を幅広く準備する必要があり、書類の量が多くなる傾向があります。更新申請は継続雇用に向けた手続きですが、労働条件・支援体制に変更がある場合は最新の状況を反映する必要があります。受入れ機関を変更する場合は、更新ではなく在留資格変更許可申請が必要です。 関連する内容は「特定技能外国人の受入れ企業が変わる場合(転籍)の手続きと関係者の役割」でも解説しています。
3. 翻訳費の見積もりで確認すべき事項
翻訳費は申請費用の中でも見積りが難しい項目です。翻訳が必要な書類の量と言語が確定しないと正確な金額を出せないため、相談時点でどの書類に翻訳が必要かを整理しておくことが重要です。
翻訳が必要になる主な書類
出入国在留管理庁の運用要領によると、雇用条件書(参考様式第1-6号)や1号特定技能外国人支援計画書(参考様式第1-17号)については、外国人が理解できる言語での翻訳が求められる場合があります。このほか、外国語で作成されたパスポートの写しや資格証明書についても翻訳が必要になることがあります。 関連する内容は「特定技能1号の支援計画とは?受入れ企業が最低限整備すべき内容を確認する」でも解説しています。
| 翻訳の確認項目 | 確認の観点 |
|---|---|
| 翻訳が必要な書類の種類と枚数 | 申請の種類・本人の状況によって変わる。事前に概算ページ数を確認する |
| 翻訳の方向 | 日本語→外国語か、外国語→日本語かによって料金体系が異なる場合がある |
| 対応言語 | 希少言語や一部のアジア言語では翻訳者の確保が難しい場合があり、費用や期間に影響する |
| 翻訳者の要件 | 申請上、公証や専門翻訳者の証明が求められる書類があるか確認する |
| 翻訳費の請求タイミング | 申請報酬と同時に請求されるか、翻訳完了後に別途請求されるかを確認する |
翻訳費の見積りが難しい理由と対処法
翻訳費は資料の確定前に正確な金額を出すことが難しい費用です。見積り段階では「翻訳対象となりうる書類の種類と概算ページ数」を伝え、上限の目安額を確認する方法が現実的です。書類が揃ってから正式な翻訳費を確認する場合は、受任前に「翻訳が発生した場合の単価・算定方法」を確認しておくとトラブルを防ぎやすくなります。
4. 見積りを比較するときの確認チェックリスト
複数の事務所から見積りを取る際は、同じ条件で比較しないと正確な判断ができません。以下の項目を確認リストとして使うと、内訳の読み比べがしやすくなります。
見積り比較のための確認項目
- 申請の種類(認定・変更・更新)は正しく記載されているか
- 申請人数は何名分の費用か
- 報酬に含まれる業務が明示されているか(書類案内・作成・申請取次・追加資料対応の有無)
- 翻訳費は報酬に含まれているか、別途見積りか
- 入管手数料など実費は別途と明記されているか(令和8年10月1日以降は改定後の手数料額が適用されるため金額を確認する)
- 証明書の取得(登記事項証明書・納税証明書等)は依頼者対応か、代行対応かが明確か
- 追加費用が発生する条件(申請内容の複雑さ・追加資料対応の件数等)が記載されているか
- 支払い時期・請求のタイミングが記載されているか
「全込み」表記への注意
「全込み○○円」という表記でも、入管手数料・翻訳費・証明書取得費が含まれていない場合があります。また、追加資料対応や申請後のフォローが別料金になっていることもあります。「全込み」の範囲を具体的に確認し、想定外の追加費用が発生しないよう受任前に業務範囲を書面で確認することが重要です。
5. 相談前に整理しておくと見積りが取りやすくなる情報
費用の見積りを正確に取るには、相談時点で以下の情報を整理しておくことが役立ちます。書類がすべて揃っていない段階でも相談は可能ですが、分かる範囲を事前に整理しておくと、見積りの精度が上がります。
相談前に確認しておきたい情報
- 申請を予定している種類(認定・変更・更新)
- 対象となる外国人の現在の所在(日本国内か海外か)
- 現在の在留資格と在留期限(変更・更新の場合)
- 申請予定人数
- 入社・転職希望時期または在留期限までの余裕
- 登録支援機関への支援委託の有無
- 外国語書類の有無と概算ページ数(翻訳費の確認に必要)
- 技能試験・日本語試験の合否状況
出入国在留管理庁「特定技能外国人受入れに関する運用要領」では、申請に必要な書類の種類が申請の種別・分野ごとに定められています。書類の種類によっては外国語翻訳が求められるものがあり、翻訳の要否は運用要領および分野別運用要領を確認することが必要です。制度や提出書類は改定されることがあるため、最新の公式情報を確認してください。
参照先:出入国在留管理庁「特定技能外国人の受入れに関する運用要領」https://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/nyuukokukanri07_00201.html
出入国在留管理庁の発表によると、令和8年10月1日から「出入国管理及び難民認定法施行令及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法施行令の一部を改正する政令」が施行され、在留資格の変更の許可、在留期間の更新の許可および永住許可に係る手数料の額が改定されました。改定後の手数料は、令和8年10月1日以後に申請を行い許可を受ける外国人が納付することとなります。なお、令和8年9月30日までに受け付けた申請に対する許可については、当該許可が令和8年10月1日以降となっても改定前の手数料の額が適用されます。
参照先:出入国在留管理庁「令和8年10月1日付け在留許可手数料の額の改定等について」https://www.moj.go.jp/isa/01_00644.html
よくある質問(FAQ)
Q. 申請報酬と入管手数料はどう違いますか?
A. 申請報酬は行政書士等の専門家に支払う対価であり、書類の案内・確認・作成・申請取次などの業務に対して発生します。入管手数料は出入国在留管理庁に対して納める費用で、申請の種類によって金額や有無が異なります。この二つは別の費用であり、見積書に「報酬」のみ記載されている場合は、入管手数料が別途かかるかどうかを確認する必要があります。なお、令和8年10月1日以降は在留資格の変更の許可・在留期間の更新の許可・永住許可に係る手数料額が改定されているため、最新の金額を出入国在留管理庁の公式情報で確認してください。
Q. 翻訳費はどの段階で確定しますか?
A. 翻訳費は翻訳対象の書類と言語が確定した段階で正確な金額が出ます。相談時点では「翻訳が必要になりうる書類の種類と概算量」を伝え、単価や算定方法を確認しておくことが現実的な方法です。依頼先によっては翻訳費を一括で提示する場合と、翻訳量に応じた変動制にしている場合があるため、受任前に確認してください。
Q. 書類がまだ揃っていなくても費用の相談はできますか?
A. 相談はできます。申請の種類・対象人数・在留期限・外国語書類の有無など、現時点で分かる情報を伝えることで、おおよその費用の構造と準備が必要な事項について案内を受けることができます。正式な見積りは申請内容が確定してから取ることになりますが、事前相談の段階でも費用の概要を確認しておくことは準備を進める上で有効です。
Q. 令和8年10月1日以前に申請した場合の手数料はどうなりますか?
A. 出入国在留管理庁の発表によると、令和8年9月30日までに受け付けた申請に対する許可については、当該許可が令和8年10月1日以降となっても改定前の手数料の額が適用されます。令和8年10月1日以後に申請を行った場合に限り、改定後の手数料が適用されます。
まとめ
特定技能の申請費用は、報酬・実費・翻訳費の三つを区別して確認することが基本です。
- 申請報酬はどの業務が含まれるかを業務範囲として確認する
- 入管手数料や証明書取得費などの実費は報酬とは別であり、誰が負担するかを明確にする。令和8年10月1日以降は在留許可手数料の額が改定されているため、最新の金額を確認する
- 翻訳費は翻訳対象の書類量と言語によって変動するため、見積り時に算定方法を確認する
- 申請の種類(認定・変更・更新)を最初に確定させることが、正確な見積りを取るための前提になる
- 複数の見積りを比較するときは、同じ条件・同じ業務範囲で比較する
申請に必要な書類の詳細については、出入国在留管理庁が公表する運用要領および分野別運用要領を確認することが基本です。申請の準備状況が整っていない段階でも、特定技能の申請サービスの業務範囲と費用の確認方法や、申請報酬と別途費用の内訳を記載した料金のご案内を参照することで、費用の全体像を整理する参考になります。また、特定技能1号の在留資格認定申請で必要な書類を種類別に整理した解説記事も、翻訳が必要になる書類の見当をつける際に参考になります。

